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- 2021年5月から、新コーナー『おかげ横丁 ちょっとより道』が始まりました。このコーナーでは、おかげ横丁から少し足を延ばした”穴場スポット”、少し視点を変えた先にある新たな発見など、おかげ横丁の旬の情報とを交えながらイラストと文章でご紹介いたします。
- うえのめぐみ(アトリエ・ちきゅうの道)
三重県津市在住の絵地図作家、ライター。
大学時代から自転車や徒歩で国内、海外各地を旅する。熊野古道ガイド、調査、ツアーコーディネーターなどの仕事を経て2013年より独立。各地への旅の経験から、古道、旧街道に興味を持ち、沿道の自然や暮らしを読み解ける絵地図描きやイラストを手掛けている。伊勢、紀伊半島は特にお気に入りの場所。
●宇治神社と高麗広の湧水
●今号のおいしいもの ~まぐろのてこね寿し(海老丸)・甘夏氷(団五郎茶屋)~
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神宮の鳥居の南西側には、宇治神社が佇んでいます。おかげ横丁からも徒歩5分ほどの距離ですが、ここに来るとおかげ横丁周辺の賑わいが嘘のように静まり返り、厳かな空気に包まれます。
スギなどの樹木に囲まれ、川筋で風通しもよく、夏の時期でも周囲の日なたと比べて暑さが和らいでいます。神宮周辺の賑わいと神路山系の自然の静けさの境界にあるこの神社は、オオヤマツミノカミを主祭神としています。オオヤマツミノカミは、全国の山の最高神として知られております。(富士山に関してはコノハナサクヤヒメが守り神となっています)。この神社の場所には、元々は丸山稲荷が祀られていましたが、神社合祀令により、明治41年にウマシアシカビヒコヂノカミ、(通称足神さん)などの25柱を合祀し、現在では宇治地区周辺四ヶ町の鎮守社となっています。- 宇治神社の境内入り口。
まずは、左側にある手水舎で手を清め、鳥居をくぐって石段を登ります。 - おかげ横丁が立地する伊勢市宇治中之切町の氏神さまにもあたります。おかげ横丁では、節分、端午の節句など季節ごとの催事の前にはご祈祷を受け、無事に催しが終わった後にはお礼参りを行っています。例えば、おかげ横丁で毎年9月に行われる全国各地の招き猫を集めたお祭り「来る福招き猫まつり」で招き猫の日(9月29日)にいただける福鈴は、宇治神社でご祈祷されています。
来る福の語呂合わせ(9月29日)となっている招き猫の日の福鈴。チリンと涼やかな音色です。
- おかげ横丁の常夜燈前で配られます。
- 宇治神社の鳥居をくぐって石段を登ると、左側に小さなお社が見えてきます。地元でも「足神さん」と昔から親しまれているお社です。昔、磯部街道沿いの笹原茶屋のご主人が足にケガをした老狐を加護し、その後祀ったというのが始まりとされています。その云われから、足の疲れや病気を癒すためにここで祈願すればご加護があると言い伝えられ、現在でも多くの人がわらぞうりやのぼり、絵馬を奉納しています。
昔は、お伊勢まいりや農作業など、生活のほぼすべてを足に頼っていたため、足の健康維持は生活には欠かせないものでした。現在は陸上選手などのスポーツ選手が祈願する姿も見られます。境内では、人々の祈りが込められた色とりどりのわらぞうりや絵馬を見ることができます。 - 足神さんお社の様子。
手前左側に撫石、右側には絵馬とわらぞうりの台があります。 - 絵馬とわらぞうりの台。
色とりどりの鼻緒が目を引きます。 - 参拝者は、足神さんの前に祭られている暗赤色の「撫石」を直接撫でることで健康祈願をしています。にぶい赤色は石英に鉄分が混入したことによる色と言われ、この辺りの川底などで昔からよく見られていました。
- 宇治神社の前は、東海地方の大動脈である国道23号の終点であり、峠を越えて豊かな自然とともに暮らす南伊勢町へとつながる道の起点でもあります。
この国道23号から県道12号に入った瞬間、周囲の雰囲気は、賑わいの町から野趣あふれる世界へと一変します。県道12号は、車が通行できる道路ではあるものの、交通量はごく少なく、行きかう人も地元の人がほとんど。そばを流れる川の音が心地よく聞こえる自然林に囲まれた道となっています。 - この道を宇治神社から2.7㎞、40分ほど歩いたところにある湧き水は、伊勢有数の湧き水として知られています。地元の人はこの湧き水を「金銘水」と呼び、貴重な水として、汲みにに来る人も多いです。
道中には五十鈴川対岸に渡れる飛び石、澄み渡った五十鈴川、見え隠れする新緑の神路山系など、新緑を身近に感じられる気持ちの良いハイキングができます。
宇治神社、おかげ横丁方面へは、同じ道を引き返して下さい。 - 1・県道12号
宇治神社から金銘水までの間は、こんな感じの山道が2.7㎞続きます。
晴れた昼間は木漏れ日がきれいな道。車には気を付けてくださいね。 - 2・五十鈴川
宇治神社を過ぎるとすぐ、左側に綺麗な五十鈴川が見えてきます。
川の向こうからは、皇大神宮(内宮)にお参りする人々の賑わいが聞こえてきます。 - 3・飛び石
幾つもの大きな石が列になり五十鈴川の対岸に渡れる「飛び石」。
作られた時期は不明ですが、かつて対岸にあった畑に行くために作られたものと言われています。石が大きいので安心して渡れます。五十鈴川の綺麗さを間近に感じることができ、おすすめです! - 4・畑跡
このポイントから五十鈴川の対岸を見ると、森の中にかつての畑を思わせる立派な石垣が。 - 5・高麗広の湧水(通称・金銘水)
宇治神社から2.7㎞上流の高麗広地区に湧く伊勢の銘水の一つ。
岩の内部から過されているため一年を通して冷たい水が飲めます。
※降水量など、その時の環境により、水の状態はかわることがあります。自然の生水ですので、各人のご判断で御飲用お願いします。 - 散策の後はお腹もすいてきますし、なにかおいしいものを食べたくなりますよね。
おかげ横丁にはたくさんの飲食店があり、郷土料理から洋食まで多種多様です。季節限定のお料理を出しているところもあり、「その時ならではの味」を楽しむことができます。
- 「伊勢の漁師の家に遊びに来る気持ちで、新鮮な地魚をお腹いっぱい食べてほしい」という思いで営まれているお店。てこね寿し・漁師汁・エビフライ・海鮮丼など、伊勢志摩の海の幸を存分に味わえます。
船問屋を模した店内の2階からは、屋根がひしめき合うおかげ横丁の風情、町にこだまする賑わいを楽しめます。
海老丸の一押しはてこね寿しです。カツオを使ったお店も多いですが、海老丸ではマグロのてこね寿しをいただけます。
まぐろてこね寿し
注文すると、お味噌汁とお漬物も付いてくるよ- 本日のてこね寿し
日替わりのお魚が二種入っているよ。
白身魚+赤身魚の組み合わせに当たると、まるで紅白てこね寿し! - エビフライ定食
海老丸のエビフライはなんと開きエビフライ!
これはけっこう珍しい!? - 船問屋を模した海老丸のたたずまい。1階にはこのカウンター席の他、座敷もあります。カウンターのわきにはいけすがあり、旬の魚が揃っています。
- 海老丸二階席からの眺め。
おかげ横丁のお店の屋根が立ち並ぶ様子は、まるで時代劇の世界に迷い込んだみたい。お伊勢参りで賑わっている町並みの様子を楽しめます!
- 伊勢街道沿いの茶屋を思わせる団五郎茶屋では、おにぎりやおそば、赤福ぜんざいなどをいただけるおかげ横丁のくつろぎ処となっています。
この茶屋では、これからの時期、期間限定の「甘夏氷」が出てきます。汗ばむ時期、甘酸っぱくて冷たい甘夏氷をぜひ味わってみてください。今年は4月17日から販売開始しました!秋ごろまでの予定です。 - 涼しげな容器にたっぷりと盛られた甘夏氷を心ゆくまで味わってくださいね!
団五郎茶屋の甘夏氷には、三重県南部に位置する年中みかんがとれる町、御浜町産の木成り(きなり)甘夏を使用しています。
木成り甘夏とは、木上で熟すまで育て上げ、春ごろに収穫する甘夏のことを言います。
通常の甘夏は寒さによる乾燥を防ぐために1月頃収穫されますが、年中温暖な御浜町では冬の期間を通して熟させることが可能です。年中温暖な気候が育て上げた心地よい自然の甘みをぜひご堪能ください。- 団五郎茶屋のたたずまい。徒歩による巡礼者が多かった時代、街道沿いには腰かけ茶屋が多数ありました。団五郎茶屋はそんな道中茶屋をイメージして作られました。風通しの良い縁側でゆっくりくつろげます。
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- とにかく気候も良く、陽の光もまぶしくなるこの時期、人も山々の自然も大変賑やかになってきます。そんな明るい太陽のもと、笑う緑に囲まれながらここおかげ横丁と周辺の自然環境の中で心に残るひとときをお過ごしくださいね。
『おかげ横丁ちょっとより道』 次号は、8月上旬ごろの掲載予定です。
- ~散策の注意~
- ●県道12号は、地元の方々や工事関係の車両、休日はバイクなどが通行しますので、車両には注意してください。
- ●宇治神社から「金銘水」までは片道2.7㎞です。体力に無理のない程度で時間に余裕をもって歩いてください。
- ●県道に沿って流れる五十鈴川は、下流には皇大神宮(内宮)の御手洗場があります。足をつけたり、泳いだりするのは避けましょう。また、県道以外の場所は基本的に神宮林や私有地です。誤って入ってしまわないよう気を付けてください。
- ●「飛び石」は、雨天時や五十鈴川の増水時はたいへん危険ですので立ち入らないでください。
- ●これからの時期、山にはマムシやマダニ、ヒルなどが出ます。肌を出さない、虫よけを持参するなどの対策を忘れずに!