師走のころ、田んぼに「伊勢たくあん」の原料の「御薗(みその)大根」を「はさ」にかける風景が見られます。かつては、収穫時期である11~12月になると、周辺の農地にはさ掛けした大根がずらりと並び、冬の風物詩となっていました。

伊勢の温暖な気候と肥えた土ですくすくと成長した大根は、伊勢の朝熊おろしの季節風をたっぷりうけ、その滋味を失わないまま干し上げられます。

原材料となる御薗大根は、一般的な大根よりも全体的に白く、食物繊維が多く、歯ごたえが良いのが特徴です。また、乾燥させることで甘みが増し、漬け込むと美しい黄金色になります。さらに根元と尻尾の太さがあまり変わらないので、漬け込みやすいそうです。

「伊勢たくあん」は、三重ブランドの一つで、地元で栽培された「御薗大根」を約2週間天日干しし、塩、ヌカ、茄子葉、柿の葉、少量のトウガラシで数ヶ月から2~3年漬け込み、熟成させたものです。歯切れがよく、乳酸発酵しているからしょっぱ酸っぱくて深いうまみが味わえます。長い期間をかけて発酵・熟成させることで、独特の香味と酸味、歯ごたえが楽しめ、「伊勢こうこ」と呼ばれることもあります。

江戸末期に三重県の伊勢路を中心に農家の副業として生産されるようになりました。また、江戸時代に流行した、お伊勢参りのおみやげにも重宝されたものです。

おかげ横丁にある傳兵衛では、伊勢たくあんを取り扱っております。