•  おかげ横丁の旬の情報や、横丁周辺のより道したくなる穴場スポットを三重県在住の旅のイラストレーター・植野めぐみがご紹介します。
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  • ●お伊勢まいりの道はいくつあったの?
    ●お伊勢まいりの道と常夜灯
    ●おかげ横丁からも歩ける、プチ歩き旅!
    ●歩いた後に飲みたい…『横丁サイダー』
    ●来る福招き猫まつり

 

  • 一般庶民にお伊勢まいりが根付いた江戸時代から現在まで、毎年多くの人が伊勢神宮におまいりに来ています。今ではほとんどの人が車や電車、バスを使いますが、自動車が生活に普及する前までは、徒歩で何日もかけて伊勢神宮へと向かいました。
  • 日本各地から“お伊勢さん”を目指す旅人のため、いくつもの参宮街道が整備されました。主な起点からの距離は、各道とも100㎞を超える長い旅路です。
  • 各参宮街道は現在、国道や集落を抜ける旧道、農道、峠を越える古道となりました。舗装された道がほとんどですが、形は変わってもほぼすべての街道を歩いてお伊勢さんまで旅をすることができます。
  • 沿道には石の道標や常夜灯、江戸時代から続く老舗の餅屋などが見られます。今でもかつての旅情を楽しむため、お伊勢さんまで歩く人もいます。道のりにはどのような風景が広がっているのでしょう。

 

  • 参宮街道沿いには、往時を偲ぶことのできる多くの史跡が見られますが、その中でも目を引くものの一が常夜灯です。

  • おかげ横丁の正面入口にも高さ3.6メートルの常夜灯が立っています、おかげ横丁の象徴の一つにもなっており、この常夜灯を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

  • 常夜灯とは、その名前の通り夜通し灯りをともすものであり、現代でいう「街灯」のような存在でした。
  • 集落の入口や辻、街道の分岐点などに設置されていることが多く、全国の街道に存在しています。お伊勢まいりの街道沿いにも、たくさん残っています。中には高さ5メートルを超えるものなど、立派な外観を持つものもあります。
  • 電気がまだなかった頃は種油、魚油、ろうなどを燃料に灯りをともしていました。火の見張りは、その地区で決められた当番が交代で行っていたと言われています。
  • 大きさや形状は様々ですが、基本的に石を積んだ土台部分、彫刻が施された竿石(さおいし)、灯りをともす火袋(ひぶくろ)、頭頂部の笠石(かさいし)で構成されています。
  • 常夜灯の本来の目的は暗い夜道を照らすということですが、その他にもさまざまな意味を持っていたとされます。
    • 旅人への道中安全祈願参宮街道沿いにある常夜灯は「参宮常夜灯」とも呼ばれます。多くは、旅人の安全を願い、街道沿いの住民らによって作られました。また、病気などでお伊勢まいりに行くことが難しい人々がお伊勢さんへの敬意を込めて建立することもありました。
    • 「太一」という文字に込められた意味常夜灯の竿石には「常夜燈」や「道中安全」と彫られているものが一般的ですが、伊勢に近づくにつれ、「太一(たいいち)」と刻まれた常夜灯が多くなっていきます。「太一」というのは、神宮の内宮に祀られている天照大神を指す言葉です。

      元々参宮街道はお伊勢まいりの道ですが、神宮への御調物(みつぎもの)、御食(みけ)を運ぶ道でもありました。神宮と密接に関わる人や物資が行き交う道であることを知らしめるためのものとされています。

    • 道しるべとして
      街の中や分岐点などに立つ常夜灯は非常に目立つもので、旅人にとっても目安となるものでした。そのような利点を生かし、常夜灯の土台や竿石には行く先の地名や距離が刻まれているものも存在します。地図がなかった頃に行く先の地名が施された常夜灯は旅人に安心感を与えたことでしょう。
  • 現在は電気も普及し、ほとんどの常夜灯は街灯としての役割を終えています。しかし、往時を偲ぶ史跡として各地で保全されており、常夜灯のある風景は独特の街道風情を醸し出しています。
  • 現在三重県内だけでも約450基の常夜灯が残っていると言われています。その中でも、自分が見た中で特に印象に残る常夜灯5カ所を挿絵にしてみました。
  • これらは物静かな街道沿いに立っていたり、昔からの集落の辻に立っていたりと、常夜灯らしい当時のままの風情を残しているところに惹きつけられます。
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  • 谷口常夜灯 (伊勢本街道 津市美杉町 1864年建立)
    山奥深い集落の中に佇んでいますが、かつては大阪から通じる主要なお伊勢まいりの道沿いでした。

  • 日永追分の常夜灯(伊勢参宮街道 四日市市)
    ここは東海道と伊勢参宮街道の分岐であり、常夜灯とともに立派な道しるべも残っています。道しるべは3方に分岐し、「右京大坂道」「左いせ参宮道」「すく江戸道」と書かれています。ここが京都や大坂(大阪)と江戸、そして伊勢への分かれ道だったことが分かります。
  • 西池上常夜灯(伊勢本街道/和歌山街道 多気町 1844年建立)
    大阪からの伊勢本街道と和歌山からの和歌山街道が重なる多気町西池上地区に立つ常夜灯です。高さは2.8メートルと特別大きいものではないですが、存在感は十分です。珍しい円形の笠石を有しています。
  • 神津常夜灯(初瀬街道 伊賀市 1829年建立1922年改基)
    桜井(奈良県)からお伊勢さんへ向かう初瀬街道の昔ながらの家屋が建ち並ぶ伊勢路集落の辻に立つ常夜灯です。この先には難所青山峠が控えているため、ここの常夜灯で旅の安全祈願をした人も多かったことでしょう。
  • 四疋田(しひきだ)の大常夜灯(伊勢本街道 多気町 1846年建立)
    高さ5.5メートルのこの常夜灯は、お伊勢参りの道の中でも最大級と言われています。この常夜灯は、当地四疋田出身の庄屋、三谷蒼山氏の遺命により、建立されたとされています。
  • 常夜灯に照らされながら続く各街道は伊勢市の「筋向橋」で一束となり、念願の伊勢神宮へと繋がります。

 

 

  • ここまで、かつて人々が歩いて伊勢神宮を目指したお伊勢まいりの道を紹介してきました。しかし、これら全てを歩けば、日数も距離も相当なものになりますよね…?実は、おかげ横丁からもぶらりとお散歩ができるお伊勢まいりの道があります。
  • ご存じの方も多いかもしれませんが、伊勢神宮は外宮、内宮の順に参拝するのが古くからの習わし。各地から集った旅人は外宮を参拝後、内宮へ向けて約6キロの街道を歩きます。この道を「古市参宮街道」といいます。

  • 今回ご紹介する散策道は、この街道をおかげ横丁から外宮方面へ向かって歩くもの。道中にある伊勢古市参宮資料館で折り返し、再び横丁へと戻る3.5キロメートルの行程です。
  • おかげ横丁を出て、まずは参宮街道へ。10分ほど歩いた先にあるのが猿田彦神社です。
  • 猿田彦神社
  • 日本神話では、天孫降臨の際、天照大神の孫・瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)の道先案内を務めた猿田彦大神を祀ることから、「みちひらきの社」とも言われます。猿田彦神社の鳥居は全国的にも珍しい八角形の柱を持ちます。
  • 牛谷坂(うしたにさか)
  • 猿田彦神社から古市にかけては「長峰」と呼ばれる小高い尾根となっているため、この先は急な坂道を登らなければなりません。
  • 宇治惣門跡(うじそうもんあと)
  • 牛谷坂が始まってすぐ左側には、宇治惣門跡と書かれた碑がひっそりと立っています。
  • 惣門とは町ごとの境界に設けられた木戸門(木製の門)で、夜間や非常時に閉門していました。明治維新までは各地にこのような惣門が見られたと言われています。
  • ここは小公園になっているので、急な坂を登る前に一休憩するのもいいですね。
  • 両宮常夜灯
  • 左手に二基の大きな常夜灯「両宮常夜灯」が見えてくると、牛谷坂の登りも終わります。内宮を目指す旅人は、この常夜灯を目にすることで「お伊勢さんが目の前だ」と実感したと言います。
  • 古市参宮街道
  • 牛谷坂を登りきると、古市の町中を抜ける平坦な道になります。かつての古市参宮街道は現在は生活道として使われ、車や路線バスが行き交います。
  • 沿道の民家にはタペストリーが掛けられ、街道の雰囲気を盛り上げているのと同時に、歩いてお伊勢参りをする人を歓迎してくれます。タペストリーの様子は前出の絵地図『おかげ横丁から古市参宮街道』内の挿絵をご覧くださいね。
  • 赤舞台
  • 古市参宮街道を歩いていくと、伊勢自動車道との立体交差点に着きます。この交差点には小公園があり、ここには何やらひときわ目を引く構造物が。
  • これは「赤舞台」と呼ばれているものです。普段は静かな小公園ですが、歌舞伎などの芸能祭や地域の催しなどが開催されることもあります。
  •  赤舞台からは、伊勢市の最高峰朝熊山(555メートル)がよく見えます!
  • 伊勢古市参宮街道資料館
  • 【伊勢古市参宮街道資料館】
    開館時間 9:00~16:30 
    休 館 日 毎週月曜、休日の翌日 
    入場無料、トイレあり。
  • 赤舞台から信号を渡ると、今回の折り返し地点、伊勢古市参宮街道資料館に到着します。江戸時代、古市の街道沿いには遊郭や芝居小屋が立ち並び、歓楽街として栄えました。古民家を再現した建物の中には、歌舞伎の衣装や台本の他、当時の食器、昔の街道の写真など当時を思わせる多種多様の展示物が並びます。伊勢に関する書記が揃う図書コーナーもあり、長居できます。玄関脇は鉢に植えられた木や花に囲まれており、色とりどりの賑わいを見せてくれています。
  • 資料館を出た後は、これまで来た道を戻り、おかげ横丁へと向かいます。街道を南へと歩くと、徐々に鼓ヶ岳が近づき、行きにも見た両宮常夜灯が右側に見えてきます。この方向から見える景色こそが、まさに江戸時代の参拝者がお伊勢さんにたどり着く直前に見た光景となります!戻り道は、かつて長い距離を歩いてお伊勢さんに向かった旅人になりきってみてくださいね。
  •  おかげ横丁へと戻ってまいりました!
  • 今号では、おかげ横丁からお散歩に行ける伊勢参りの参道として、伊勢古市参宮街道資料館を折り返す行程をご紹介しました。もし時間や体力的にもゆとりがあれば、外宮をお参りした後に古市参宮街道を抜けておかげ横丁へと歩くことも可能です。こちらは6キロメートルの歩き旅となります。

 

 

  • 歩いた後、暑い日のおかげ横丁めぐりなどのときにおすすめなのが、「横丁サイダー」。糖度9.6度と、後切れの良いすっきりした甘さが味わえます。懐かしいデザインのラベルが冷涼感を掻き立ててくれます。
  • 五十鈴川を眺めながらキーンと冷えたサイダーでのどを潤す夏のひと時を過ごしてみませんか。
  • おかげ横丁内では、味の館でお買い求めいただけるほか、飲食店のメニューにもありますよ。

 

 

 

  • 今年の9月18日~9月29日の期間、来る福招き猫まつりがおかげ横丁一帯で開催されます。このお祭りは、「年に一度、招き猫に感謝をしよう」という思いで1995年に始まりました。

  • 招き猫には色ごとにいわれがあります。今年は「良縁」の意味が込められた黄色い招き猫が登場します。

  • 昨年から続く新型コロナウイルスの影響で、普段なら普通にできていたことができなくなった人、普通に会えていた人と会えなくなった人も多いことと思います。この状況下だからこそ、幸せの黄色い招き猫と一緒に人と人とのつながりがこの先も豊かであるようお願いするのもいいですね。

  • 今年は、作家によるこんな“幸運づくし”の招き猫も登場します!有田焼の招き猫(高さ約45センチメートル)です。黄色い招き猫をよく見ると、鶴、亀、松…幸運の象徴ともいえる存在が繊細に描かれています。見ているだけで心から幸せな気持ちになれそうですね…♡
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  • いにしえの旅人になった気分でいつもとは少し違う、徒歩という手段でたどり着いてみるおかげ横丁はいかがでしたでしょうか。旅人をもてなしてきた伊勢の本来の姿が見えてきそうですね。そんな癒しの空間であるおかげ横丁で、心に残る夏のひと時をぜひ。

 


  • 参考文献

    『伊勢参宮本街道を歩く』 吉井貞俊 著
    『検定お伊勢さん公式テキストブック』 伊勢商工会議所 伊勢文化舎 編集・発行
    『東海近畿の参宮常夜燈』 荒井留五郎 著